介護問題

【もの忘れだけでない認知症】様々な症状を情報処理のパターンで考えた。

認知症パターン

以前、認知症になった母の物盗られ妄想の凄まじさについて記事を書きました。

物盗られ妄想と幻覚
【物盗られ妄想】認知症の母の幻覚・妄想と闘った日々。母が認知症になって”認知症”=”もの忘れ”ではないという事を知りました。 いっそ全部忘れてくれれば、どんなに楽かと思いました。 ...

また、以下の記事では認知症についての誤解についても記載しています。

認知症の誤解
【誤解】認知症の人は「昔の事はよく覚えている」「ボケてるから本人幸せ」なの?実際に身内が認知症になるまで、認知症について誤解していた事が多々ありました。 などありますが、他にも「昔の事は覚えてい...

これらの記事にも記載している通り、「認知症=もの忘れが酷い」ではなく、「もの忘れ」は認知症の症状のほんの一部分なのです。

記憶を情報と言い換えるとすれば、情報を失う(忘れる)だけではなく、情報の処理全般に問題が発生していると言えるでしょう。

本記事では、認知症への誤解を解くために、改めて、情報の処理に問題が発生しているという観点から症状をパターン分けします。

このパターン分けは、何かしらの医学的知見に基づくものではなく、私独自の視点(要するに独断と偏見)で分類したものですので、ご注意ください。

認知症の情報処理の欠陥パターン

認知症の人は、情報の入力、記憶、処理、出力のそれぞれの段階で問題が生じていると考えられます。それぞれの問題のパターンを以下のように分類しました。

情報の入力ができない。
(記憶できない)

まずは、情報の入力が出来ない(記憶できない)パターンです。

例としては、「今伝えた言葉を復唱できない」「数分前に伝えられた言葉(単語レベル)を思い出せない」「さっき見たものを思い出せない」などです。

そもそも記憶が出来ていないので、それについて改めて伝えても、思い出すのではなく初めて聞いたような反応になります。

また、「見当識」といって、今が「いつ」で、ここが「どこ」だかわからないのも、環境からの情報の入力が出来ない影響と言えるでしょう。

情報を引き出せない。
(思い出せない。)

情報は脳の中にあるけど、引き出せないパターンで、データとして存在するけど検索できないイメージです。

例としては「自分の年齢が言えない」「名前が言えない」などがこれに該当します。

認知症のテストで「野菜の種類をできるだけ言ってください」というテストがありますが、これが出来ないのも情報を引き出せない事が一要因と言えるでしょう。

情報が喪失している。
(忘れている。)

情報自体が喪失してしまったパターンです。

認知症の一般的なイメージはこのパターンなのではないでしょうか?

思い出せない事が情報が存在しているのに引き出せないのに対して、忘れている事は情報自体を喪失しまっていると考えられます。

この場合、情報を伝えても「あー、それそれ」「あー、そうだったね」とはなりません。

情報が入力できていない場合と同様に、初めて聞いたような反応になります。

私の母の場合、20年前に死んだ父の存在自体を忘れており、名前を言っても写真を見せてもエピソードを話しても思い出しませんでした。

あたかも脳から完全に記憶が消去されてしまっているかのようでした。

情報が混乱している。
(幻覚、妄想)

頭の中の情報が混乱して、ありもしない記憶を作り出しているパターンです。

私の経験上、最も厄介だったのがこの情報の混乱=幻覚+妄想です。

物とられ妄想は典型的なこのパターンとなります。

「家に知らない人がいる」「お金を盗ったところを見た」などと言われて、本当に疲弊しました。

しかも最初は認知症だからすぐ忘れると思っていましたが、その妄想はずっと「覚えている」のです。

情報の演算ができない。
(計算、文章を書くなどができない。)

ごくごく簡単な計算ができなくなります。

認知症のテストで、「100から7を引いていってください」というものがありますが、私の母は最初の93が出ませんでした。

同じく「数字の341を逆に言ってください。」という数字を逆唱するテストがあります。普通ならば「143」とすぐに言えそうですが、母は、それもできませんでした。

他には、「なんでもいいから好きな文章を書いてください」と言われても全く書けないなどもこのパターンです。

情報の出力が出来ない。
(思ってる事が言えない。)

頭には思い浮かんでいるのにそれが口から出ないパターンです。

情報を引き出せないパターンと似ていますが、こちらは情報を引っ張ってきて頭にあるのに、それが口から出なかったり、字として書けなかったりします。

まとめ

以上、情報処理の観点から、認知症の症状をパターン分けしてみました。

このように分類した理由として、「認知症=もの忘れ=情報の喪失」という認知症の誤解を解きたいからと冒頭に書きましたが、もう一つの理由としては、1パターンにだけ注目していると認知症を見逃す危険があるからです。

例えば、以下のようなパターンも考えられます。

  • 複雑な計算ができる(情報の演算できる)けれども、覚えが悪くなっている。(情報を入力できない)
  • 覚えは良い(情報を入力できる)けれども、昔の事を忘れている。(情報を喪失している)

高齢の親がいる方、また自分自身が高齢に差し掛かっている方はこのような事を頭に留めておいた方が良いでしょう。(私も自身の若年性認知症が気になる今日この頃・・)

なお、分類にあたってはMMNE(ミニメンタルステート検査)と長谷川式認知症スケール(HDS-R)という認知症の診断テストの内容を参考にしました。

それぞれの概要については以下のサイトを参考にさせていただきました。

これらの内容を見ると認知症の診断テストが単なる記憶力検査ではない事がわかります。