介護問題

障害を持つ子の将来のための貯金。それって本当に役に立つの?

子のための貯金

私の母は知的障害の兄の将来のために、障害年金、自治体から出る障害者手当のかなりの部分を貯金していました。

しかし、兄が急逝した今、全ては無駄となり、母への逆相続で手間と費用がかかっただけでした。

もちろん、子が先に亡くなるのはレアケースです。将来、お金が何に必要になるかわからないので、貯めておくに越した事ないと思われるかもしれません。

しかし、障害のある子のための貯金が、将来、本当に、その子のために役に立つのでしょうか?

本記事では、「障害の子のための貯金は活用されるのか?」「貯金よりも大事な事があるのではないか?」について考えていきます。

※一言で障害者と言っても様々な方がおられます。本記事では、自分の意思でお金を管理できない(お金が何かすらわからない)ような重度の知的障害者のケースを想定しております。

障害の子のための貯金は活用されるのか

本サイトでは繰り返し記載してますが、認知症や知的障害者の場合、本人以外がそのお金を管理することが、年々、難しくなってきています。

いざ、多くのお金(数百万円単位)が必要になった時に、銀行によっては、そのお金を簡単に下ろさせてくれない可能性があります。

特に、定期預金にしている場合は一悶着あるかもしれません・・

私のように、親からその管理を引き継いだ場合は、なおさら複雑です。

もし正直に「親が認知症になったので、これからは、兄の貯金の管理を自分がやります」と言ったら、成年後見制度を勧められたと思います。(最悪、凍結されたかもしれません。)

これも度々、このサイトで書いてますが、現状の成年後見制度には、色々と問題があります。

お金に関するやっておいたほうがよかった事
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成年後見人は、本人のお金を可能な限り「保護」しようとするため、家族が望んでも後見人が不要と思うようなものには使わせてもらえません。(例えば旅行に連れていくために本人のお金を使おうとしても難しい可能性があります。)

さらに、成年後見人に払う管理費として月々3万円から5万円程度が必要です。(貯金額によります。)

成年後見人をつけて月々5万円払う場合、私の兄は53歳だったので、今後30年生きていたとすれば、トータルで1800万円とられた計算になります。また亡くなった時も相続手数料として、ン100万円くらいとられた可能性があります。(そしたら、ほぼ残高0です。)

実はそんなにお金はかからない。

「成年後見人にお金を払う必要があったとしても、やはりお金は必要なので貯金しておく必要があるのでは?」

これは障害のある兄の介護をしてから知った事ですが、日本の障害者福祉はなんだかんだ言って充実しています。

基本的に施設に入った時に支払う費用は年金などの収入を超える事はありません。

日用品の補充、衣服、散髪、医療費などは別途必要です。
また、施設ではなくグループホームの場合、家賃等の料金設定がまちまちの場合がありますが、年休収入などを考慮した料金設定になっているところが多いようです。

我が家のケースでも、母が兄のために貯めていた貯金も、増えこそしませんが減る事もなかったです。

「でも大病したらお金がかかるのでは?」

医療費も障害者に対しては相当優遇されています。(私の兄の場合は0円でした。)

もし大病したとしても、通常の保険の範囲の治療であれば、そんなに心配する必要はありません。

なお、高齢者介護は、また話しは別です。高齢者施設の金額はピンキリで、年金を大きく上回る可能性はあります。

お金がかかるのは施設入居までのドタバタ

兄のために、お金が最も必要だったのは、施設入居までのドタバタです。

私の場合、母の認知症が発覚したため、兄の入居施設を早急に決める必要がありました。

役所、ショートステイした施設、1時的に入院した精神科病院、面談のためにおとづれた施設などへ向かう交通費(主にレンタカー代)はバカにならなかったです。

当然、施設が決まらずに長引けば長引くほどお金がかかります。

私の場合、面談のためにおとづれた施設も、最大で車で3時間程度の距離の所でしたが、最悪は北海道の施設も視野に入れていたため、そちらへ兄を連れて面談に行くとなったら、かなりのお金が必要になったでしょう。

早いうちに入所施設を決める。

というわけで、早めに入所施設を決める事をお勧めします。

親なので、出来るだけ施設に入れずに手元に子供を置いておきたい気持ちはわかります。

ただ、結局、自分自身が死んだら(もしくは病気になり身動きが取れなくなったら)、行政に、とりあえず全国のどこかの空いている適当な施設に入れらるでしょう。

最悪、どこも空いてないと精神科病院です・・・

自閉症と精神病院
【体験談】兄が精神病院へ入院した時の話母は長年1人で知的障害(自閉症)の兄の世話をしてました。 母が認知症になって困った事の一つは、そんな兄の世話をどうするかでした・・...

なので、まずは自分(親)が生きているうちに、障害がある子のために良いと思われる入所施設を決める事です。

お金を使うなら、そういったところに集中して、使うことをお勧めします。

結論→使える時に使いましょう

結論として、日本の福祉制度はそれなりにしっかりしているので、施設入所時などのイベント以外では、そんなにお金を使う場面は来ません。

もちろん、今後、日本の財政が厳しくなり福祉に使われるお金が減るかもしれません。ただ、そんな事言ったら、日本自体もどうなるかわからないので、キリがないです。。

そもそも、障害年金や障害手当は貯金するためではなく、必要な事に使うために支給されるものです。

もちろん、多少の貯金の必要はあるかもしれませんが、相続税が発生するようなレベルで貯める必要はないと思います。

将来、自分自身が死んで、子を施設に入れざるを得ないのであれば、今、家にいる時に、美味しいものを食べさせてあげたり、旅行に連れて行ってあげたりに使うべきだと思います。

私の兄は重度障害で、奇声を発したり急に歩き回ったりするため、他人がいるところでの外食はできませんでした・・・

今思えば、高いお金を使ってでも個室を用意するなどしてでも(そもそも兄自身がもらっている年金です)、少し贅沢をさせてあげれば良かったと思います。