母は長年1人で知的障害(自閉症)の兄の世話をしてました。
母が認知症になって困った事の一つは、そんな兄の世話をどうするかでした・・・
そして、精神病院に入院という選択肢を選びました。
※ちなみに現在は精神科病院と言うらしいですが、わかりにくいのでここでは精神病院で統一します。
もくじ
以前からあった我が家の兄の将来問題
兄は生まれた時から知的障害(自閉症)でした。
かなり重度なので、喋る事もできず、誰かの世話が常時必要な状態でした。
しかも兄は身体的には問題なく力もあるので、言うことを聞かない場合やパニックになった時(パニックになると襲いかかって来ます・・)に、年老いた母では言うことを聞かすことができません。
以前から施設に入れないとダメだと母には言っていたのですが、母としては可愛い息子を入れるのが忍びないので乗り気ではなく、強く言うと最後は決まって喧嘩になってました。
施設に入れるにしても家からすぐ近くがいいと言っていましたが、そんな都合の良い条件の施設はないのです。
常に待ちの状態で、空きが出たとしても、東北や北海道など遠い所しかなく、都内で空きが出て入れるなど、よっぽど運が良くなければ、無理な状態でした。
母の認知症発覚前。すでに世話はできてなかった。
実は、母が「おかしい」のを一番最初に気がついていたのは、兄がデイサービスで通所していた施設の職員の方でした。
お金を一度払ったのにもう一度払おうとする、祝日で休みなのに送迎のバスをまっている等、頻繁にあったそうです。
一番の問題は、兄の服薬管理ができていなかった事です。
兄は、てんかん発作の薬や精神安定剤や睡眠薬などなどの10種類近くの薬を処方されていました。
そんな薬の管理を認知症になってた母ができるわけありません。
二回飲ませてしまったり逆に飲ませなかったりだったようで、ある薬は足りないのにある薬は余っているなどの状態になってました。
兄がてんかん発作が多かったり、立ち上がれないほどグッタリしてたりする事もあったらしく、施設の職員の方はずっとおかしいと思っていたらしいです。
また、食事の世話も出来てなく、食べさせたり食べさせてなかったりだったようです。
精神病院という選択
そのような状態なので、母が認知症になってしまった以上、常時世話が必要な兄は知的障害者が入れる施設に入る選択肢しかありませんでした。
でも、前述のように、そんな都合よく空いてません。
正直な気持ちとして、親が年老いてしかも認知症になったのだから、行政ももう少し優先的に扱ってくれてもいいのではと思いました。
ただ、私のようなケースもそんなにレアケースではなくその程度の事情の人はたくさんいると言われました・・・
それでも市の障害福祉課の方や兄の通所施設の職員の方々にご協力いただき、色々探してもらって、ショートステイ(2、3日から1週間程度)ができる施設を3つくらい渡り歩くことができました。
しかし、どうしてもその後が見つかりません・・・
そんなある日、障害福祉課の方から連絡がありました。
頭を殴られたような絶望感に襲われました。
もともと精神病院は、後天的な精神障害の方のための病院なので、兄のような先天的な知的障害の人のための場所ではないのです。(ただ後から知ったのですが、知的障害の人も結構、入っているようでした)
また、奇しくもその数日前に「精神病院で拘束された男性が亡くなった」という事件をニュースで聞いたばかりでした。
ただし、それを断るともう兄を家に戻すしかなく、詰んだ状態になります。
自分が会社を休んで兄と母を24時間世話することになります。
苦渋の選択で了承しました。
ただ精神病院を終の住処にはさせたくなく、障害福祉課の方には「もう贅沢言ってられなので、全国どこの施設でも空いたら知らせてください」とお願いしました。
精神病院への入院の日
入院の日の朝、ショートステイしていた施設から兄を連れ出しました。
兄は喋る事ができないので、何を思っているのか・・
「また違う施設に行くと諦めているのか、ようやく家に帰れると思っているのか・・・」
そんな事を考えつつ病院へ向かいました。
病院について入院手続きを済ませた後はお医者さんと面談です。
担当のお医者さん自身はすごく感じが良い方でした。
こちらの事情もよくわかってくれているようで、施設が見つかり次第、退院すると言う事で納得していただけました。
看護師さんを始め、職員の方々も本当に感じが良くて、一瞬、「ずっと、ここでもいいんじゃないのかな?」と思いました。
その思いが一転したのは、入院する「個室」を見た時でした。
鉄扉の部屋を入ってみると殺風景な部屋にベッドとトイレが。
あー、これってテレビとかで見る刑務所の風景だなと思いました。
一刻も早く兄をここから連れ出したいと思いました。
拘束することへの同意
ある日、精神病院から電話がありました。
兄が勝手に部屋を出て、他の人の部屋に入っていってしまいトラブルになったとの事です。
別に何かをしたわけではないのですが、他の方もナイーブな方々ばかりなので、他人に踏み入れれらたら大変な事になることもあるとの事です。
「なので、部屋に鍵を閉めて良いですか」と言われました。
仕方がないので同意しました。
因みに後からこういったものを見せられました・・・
次に電話があったのは「他の患者さんとの都合上、大部屋に移動させる」との要件でした。
「あの刑務所のような鉄格子の中にいるよりはよっぽど良い」ので、全然OKと思いました。
ただし、大部屋で他の人との接触が増えるので、前のように他の人のプライベートゾーンに踏み入ると問題があるので「ベッドに拘束する」とのことでした。
断るという選択肢はない(断る→強制退院)ので同意しました。
外出の日
兄は歯医者に通っており、当初は病院内にある歯科でも治療ができると言われてました。
ただ、やはり慣れている行きつけの病院(知的障害者専門の歯科)が良いとの事になり、歯科には定期的に私が病院から連れ出して連れて行く事になりました。
兄は、車椅子に乗ってました。
薬が原因なのか長く拘束されていたのが原因なのかはわかりませんが、歩けなくなり、常時オムツ着用になってました。
また半分寝ているような状態なので、車に載せるのも降ろすのも力づくでした。
この時は、もうちょっと服薬調整をどうにかできないかと伝えました・・・
だって、これって、ただ単に息をしてるだけだよね・・?
知的障害者施設探し
一刻も早く、兄を退院させたい・・
でも施設探しを行政にばっかり頼っててはダメだと言われました。
周囲の方々からも言われましたし、市の職員の方にも言われました・・(どうしても限界があると・・)
二進も三進も行かなくなって、噂で私の地元で強い某宗○団体に入るとそういう紹介とか強いみたいな話もあり、背に腹は変えられず、入信しようかと思ったくらいです。
その他としては、後輩の知り合いのツテで関東近辺の施設を当たってみた事があります。(北海道とか考えてたくらいなので、関東県内ならば全然OKです。)
面談に行くまでは電話で話していても前向きに検討してくださっており、かなり可能性が高い雰囲気がありましたが、面談に行った時に車椅子に乗っている兄を見て、後から「身体障害者施設ではないので、歩けるようになってから・・・」と遠回しに断られてしまいました。
精神病院に入る前の「歩ける状態」ならば、入れたかもしれません・・・
そうすると、これ、もう何処に行ってもダメなんじゃないの?と絶望的になりました・・・
奇跡
そんな絶望感の中、北海道の施設には空きがあるとの事で、そこにも行く準備を進めてました。
兄が北海道の施設入ったら定期的に北海道に行く機会ができて、美味しいもの食べれるからいいんじゃないかなとかポジティブに考えてみたり・・・
その時、奇跡が起きました。
都内の施設に空きができたと障害福祉課の方から連絡があったのです。
面談で落とされないかドキドキしましたが、兄がデイサービスで通所していた施設の職員の方が本当に誠心誠意、その施設の方を説得してくださり、入所まで漕ぎ着ける事が出来ました。
市の職員の方に「10年に1度の奇跡」だと言われました。
最後に
念のためですが、決して精神病院で虐待されていたとかではありません。
職員数と患者数の比から言って、兄のような多動でいう事を聞かないような人の世話をするような仕組みにはそもそもなっていないのです。
その範囲の中で職員の方は一生懸命に対処してくれていたと思います。
ただ、あのまま入院しっぱなしだったら、本当に廃人のようになっていたと思います。
なお、入所できた施設の職員の方は本当によくしてくれて、今はトイレにも自分で意思表明して行けるようになったし、若干補助が必要ですが歩けるようにもなりました。
そんな今の兄の姿を見ると施設に入れて本当によかったと思います。