母が認知症になって”認知症”=”もの忘れ”ではないという事を知りました。
いっそ全部忘れてくれれば、どんなに楽かと思いました。
認知症の初期・・最もやっかいな症状に「物盗られ妄想」というものがあります。
この記事では、そんな母の妄想と闘かいの記録について記載します。
もくじ
物盗られ妄想
最初に介護認定のための認定調査員が家にヒアリングしに来たときに以下のような事を聞かれました。
いやいや、何言ってるの、この人・・そんな事あるわけないでしょ。と内心思いました。
1週間後に怒鳴っている母がいました。
最初は叔母が色々と手伝いに来てくれていたのですが、その叔母が自分の服を持っていったと言うのです。
どんなに「そんな馬鹿な事あるわけないでしょ?」と言っても聞く耳持ちません。
最初、言い出した時は、「まあ、次の日には忘れているんじゃないかな?」と淡い期待を抱いてましたが、その事については全くもって忘れません。(忘れるも何もそんな事実はないのですが・・)
この症状が「物盗られ妄想」という一般的な認知症の症状だと知ったのは、その後のことでした。
親戚が服を持っていくと騒ぐ母
叔母をはじめ、基本的に物がないと親戚(母の実の姉や甥など)が疑われました。
叔母(つまり母の姉)には、毎日のように電話をして、物を返せと怒鳴ってました。
家に来てもらったりするとさらに面倒で、物を盗みに来たと思って、玄関で追い返したりします。そして玄関で追い返したのにも関わらず、その時に物を持って行かれたと嘆きます。
「盗んでいくところを見た」とまで言い出します。
なので、親戚に手伝ってもらうにも限界があり、私自身でやらなくてはならない事が増えて大変でした。
お金を盗られたと嘆く母
そして、盗られたと思っている対象は服からお金にまで拡大しました。
知り合いにこの件について話した時に「そんなにお金に執着する人だったの」と言われた事があります。
決して、そんな事はありません。
私の両親はお金に全くと言っていいほど執着がなく、そのせいで人によけいにお礼を渡したり、あまり考えずに使ってしまったりするような人でした。
でも、そんな人でも自分の使えるお金が一銭もないと思ったら不安になりますよね??
しかも、家中探してもお金が無いんですよ。
ついさっきまであったお金が「何故か突然に」なくなるのです。(母談)
それは不安で仕方がない事だと思います。
徘徊して、近所の方や、近くの郵便局まで行って「お金がない」事を訴えた事もありました。
郵便局の窓口で「銭ください」と書いた紙を持って立っていたそうです・・・
母はもう自分で買い物とか行く事もできませんが、仕方がないのでお金を母に渡します。
次の日に行くともうありません。
次の日に行くともうありません。
という無限ループが続きます。
大切なものだからと、誰にもバレないところにしまってしまって、そしてその場所を忘れてしまうのです。
家が片付けられなくてゴミ屋敷状態なので、もう見つからないです。
最初は10万円くらい渡してたのですが、最終的に2万円くらいにしました。(本当は千円くらいにしたいのですが、流石に万札がないと納得しません)
専用の財布に入れて、その財布にネットで買った発信機みたいのをつけたりしましたが、中身だけ消えていたりするので意味がなかったです。
因みに後になって、衣類の山の中から一部でてきたことがあります。(でも、もっとあるはずなんだけどなあ・・・)
そして息子も信じなくなる。
誰にもバレない所にしまってしまう(そして忘れる)理由として、身近な人ほど信用しないというのがあります。
最初は、親戚が疑われていても、流石に自分の子供だけは信頼してくれていると思ってました。
ある日、近所の方から声をかけられました。
宝石類を箱に詰めて、預かって欲しいと言われて、無理やり預かされたとのことです。
近所の人よりも自分の息子が信用できないのか・・・・
教科書的な対処法は?
どのように対象すれば良いのか色々と調べました。
物を盗まれたと言われたら・・・
とか絶対に言ってはいけないそうです。
と言って一緒に探しましょうと・・・
いや、でも探してもないと余計、疑われるんですが・・・
もちろん、それでうまくいく場合もあるのだと思います。
でも、一緒に探してもない物はないんですよ。
そして母から以下の言葉を頂きました。
幻覚とのハイブリッド
介護認定の認定調査員が家にヒアリングしに来たときに、以下のことも、聞かれました。
はぁ?何言ってるの、この人。人の親をなんだと思ってるの?
と思いました。すいません。私が無知でした。
1ヶ月後。
妄想だけでなく幻覚症状も出だしたのです。
そして、物盗られ妄想と幻覚のハイブリッドな症状が出てきます。
被害妄想
普段、「それ、被害妄想じゃねー(笑)」みたいな感じで友人とたわいもない話をしたこともありますが、このような一連の母の状態を見ていると「あー、これが本当の被害妄想なのね」と思いました。
驚いた事の一つに、母の口から出てくる子汚い言葉がありました。
私自身はめちゃくちゃ口が悪いのですが、私の母親は言葉使いが非常に丁寧な人でした。
家族同士と言えども、怒っていたとしても、生まれてこの方、母から汚い言葉は聞いた事がありませんでした。
認知症になったら、まあ、小汚い言葉が出ること出ること・・・
そして怒るだけならば、まだいいのですが、最終的には、
と言って怒り、泣き出します。
当初はこっちも疲労困憊だったので、正直、一瞬「いっそのこと、そうしてもらうと助かるな」と思いました・・・
(一瞬ですよ・・・)
そして向精神薬という選択
今でもこの判断が正しかったのかどうかわかりません。
医者に相談したら、向精神薬を勧められました。
処方された時に「もし起き上がれなくなるなどの症状が出たらすぐに来てください」と言われたので怖かったです。
ただ、次の日から嘘のように怒鳴り散らしてた母がおとなしくなりました。
幸い、起き上がれなくなるといった症状もありませんでしたが、薬で人ってここまで変わるのかと思うとそれも怖かったです。
物盗られ妄想が全くなくなったかというわけではないのですが、叔母に毎日電話するような事もなくなり、訪問してきても普通に受け入れるようになりました。
最後に
繰り返しますが、今でも向精神薬選択が正しかったどうかはわかりません。
そして、個人的にはオススメしません・・・
この症状は認知症の初期によくある症状のようで認知症が進行するとなくなるケースが多いらしいです。
嵐を1年間、やり過ごす気力と体力があれば、飲まない方がいいのではないかと思います。
なお、一度飲み始めると、やめる事も慎重にしなくてはいけないらしく、症状がおさまった今でも飲み続けており、その後、身体能力も徐々に衰えてきましたが、ふと心の中で「この薬のせいでは?」と思う事があります。
現在の「よく言えば落ちつているけど、悪く言えば元気がない」状態を見ると、むしろ「物が盗まれた」と言って騒いでいた時の方が元気があったなと思う時もあります。
喉元過ぎれば・・・かもしれませんが。