「自己都合退職」か「会社都合退職」で失業手当の給付日数が違うのは多くの皆さんがご存知かと思います。
となった場合でも、あくまでも「自分から申し出た退職=自己都合退職」なので、失業手当の給付日数は会社都合と比較して短いと思われるかもしれません。
ただし、「残業が多い」「精神的につらい」などの場合、給付制限期間・給付日数が通常の退職の場合よりも優遇され、場合によっては会社都合扱いと同じになる可能性があります。
私は、それを知らなかったです。
もし知っていれば、優遇される可能性があったと思ってちょっと後悔しています。
本記事では、自分自身の反省を踏まえて、以下について記載します。
- 「自己都合退職」「会社都合退職」の定義は?
- 給付制限期間、給付日数が優遇される条件は?
- メンタル・介護離職・社畜(?)が優遇されるためには?
もくじ
「自己都合退職」「会社都合退職」とは?
「自己都合退職」「会社都合退職」といった言葉がよく使われますが、厳密には、退職者の分類は、「特定受給資格者」「特定理由離職者」「一般退職者」となります。(※「一般退職者は「それ以外の退職者」みたいな書き方もされますが、本記事では、「一般退職者」に統一します。)
自己/会社都合 | 分類 | 説明 | |
---|---|---|---|
会社都合退職 | 特定受給資格者 | 「倒産」「解雇」等により離職した者 | |
自己都合退職 | 特定理由離職者 | 1 | 労働契約期間満了で更新を希望したにも関わらず更新されなかった者 |
2 | 正当な理由により自己都合退職した者 | ||
一般退職者 | 正当な理由なく自己都合退職した者 |
特定受給資格者がいわゆる「会社都合退職」でそれ以外が「自己都合退職」となります。
まずは、この分類を頭に留めておいてください。
なお、説明に記載している内容の詳細は、厚生労働省の以下のリンク先のPDFに記載されています。
特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(厚生労働省)
給付制限期間、給付日数が優遇される条件は?
では、会社都合退職である「特定受給資格者」のみが給付制限期間、給付日数ともに優遇されるのでしょうか?
実は、上記の分類に従って、もっと細かく決められています。
自己/会社都合 | 分類 | 給付制限期間 | 給付日数の優遇 | |
---|---|---|---|---|
会社都合退職 | 特定受給資格者 | なし | あり | |
自己都合退職 | 特定理由離職者 | 1 | なし | あり |
2 | なし | なし | ||
一般退職者 | あり | なし |
特定理由理由離職者の1(契約を更新されなかった場合)までは、特定受給資格者、いわゆる会社都合退職と同様の扱いになります。
さらに特定理由離職者の2の場合、給付日数については一般退職者と同じですが、3ヶ月の給付制限期間はなく、すぐに(7日間の待機期間終了後)、失業保険をもらう事ができます。
給付日数の優遇については、年齢、働いていた期間によって異なります。
私の場合(45歳以上、60歳未満/10年以上・20年未満)は、一般退職者だったので給付日数は120日でしたが、もし特定受給者ならば、270日でした。(倍以上違う・・・)
※その他詳細は以下のハローワークのサイトに記載されています。
メンタル・介護離職・社畜が優遇されるためには?
では、メンタル、介護、社畜(?)を理由に退職する場合はどうなるでしょうか?
厚生労働省の判断基準を元に考察していきます。
メンタル(うつ病など)を理由に退職する場合
特定理由離職者の2の「正当な理由による退職」の①に以下の記載があります。
「体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者 」
メンタルはいわゆる「心身の障害」であり、診断書があれば「特定理由離職者の2」に該当する可能性があり、給付制限期間が「なし」になります。
介護離職の場合
「正当な理由による退職」の③に以下の記載があります。
「父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合 又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭 の事情が急変したことにより離職した者 」
証明できる書類があれば、介護離職はこれに該当する可能性があり「特定理由離職者の2」として、給付制限期間が「なし」になります。
社畜(?)の場合
ここで、「メンタル」「介護離職」と来て、社畜・・って分類的におかしいですよね。(なので(?)つけてます。)
と思われるかもしれません。
もちろん、社畜である事を理由にはできませんが・・
社畜は残業時間が多い可能性が高いです。
そして過度に残業時間が多い場合は、退職の正当な理由になります。
しかも「残業が多い理由」というのは「正当な理由」かどうかで「特定理由離職者の2」に該当するのかという問題ではなく、「特定受給資格者」の「解雇等により離職した者」に該当する可能性があります。
「解雇等により離職した者」の⑤に以下の記載があります。
「離職の直前 6 か月間のうちに 3 月連続して 45 時間、1 月で 100 時間又は 2~6 月平均で月 80 時間を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関 から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者」
残業時間が以下の「OR」条件(どれか一つに当てはまれば良い)って・・
- 3月連続で45時間
- 1月で100時間
- 2〜6月平均で月80時間
と思いました・・
世の社畜の皆さんならば、頭がマヒしているので、「これぐらいの残業時間は普通じゃん」と思う方もかなりいらっしゃるのではないでしょうか。
なので、勤怠表などを提出できれば、会社都合退職扱いになり、給付日数もかなり優遇される可能性があります。(社畜すぎて勤怠表自体を細工している場合でも、何かしら証明出来るものがあれば、可能性があります。)
そもそもどうやって申告する?
ここまで、場合によっては、失業手当の給付について優遇される可能性がある事について、記載してきましたが、そもそも、それ(離職理由)ってどのように申告するのでしょうか?
実際、退職時にもらう離職表には、会社がすでに離職理由を記載しており、そこには「4D」と書かれている可能性が高いです。
「4D」というのは、離職区分で「正当な理由がない自己都合退職」に該当します。
会社にメンタルや介護を理由として伝えたとしても、気をきかせて、それに該当する離職区分にはしてくれません。(私の会社はそうでした・・)
何故ならば、会社としては「社員をメンタルにさせた」「介護と仕事の両立の環境が整っていない」みたいな感じにはしたくないからです。
ましてや、会社が残業時間を計算して、残業時間が多いから「解雇等により離職した者」になんて、絶対にしてくれません。
それこそ、会社自らうちはブラック企業ですと言っているようなものです。
ではどうすれば良いのでしょうか?
- 離職票をもらう時に、その場で異義を申し出る。
- ハローワークの初回で、証拠(診断書、勤怠表)を揃えて異義を申しでる。
といった選択肢があります。
ただし会社とは喧嘩モードになるかもしれません。(会社としては可能ならば避けたい事態なので・・)
また、次の転職を考えている場合、転職先によっては「会社都合退職」が不利になる可能性もあるとか記載しているサイトもあります。(真偽はわかりませんが・・)
まとめ
以上、メンタル・介護離職・社畜(≒残業が多い)ならば失業手当の給付が優遇される可能性がある事について記載しました。
最初にも書きましたが、私は「あんまりよくわかってなかった」ので会社からもらった離職票の「4D」(正当な理由がない自己都合退職)をそのまま離職理由としたため、給付制限期間3ヶ月ありの一般的な給付期間でした。
最初に「知らなくて後悔した」と記載しましたが、「もし知っていたとしたら異義を申し出たか」というと、会社と事を構えるのが面倒臭いので、結局、円満退職したような気がします。
ただ本当に金銭的に切羽詰まっている方や、そもそも喧嘩モードで退職した方(会社許すまじの方)は、異義を申し立てる選択肢もあると思います。